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2008/10/10

取調室にて

 「もうそろそろ本当のことを話してもらえませんかねぇ?」
 「アンタもしつこいわねぇ。さっきから何回も話してんじゃない!」

先ほどから、こんなやり取りが何度も続いていた。

 「一体凶器をどこに捨てたんです?」

ギョロ目の男が女に顔を近づけて訊いた。
男は刑事。
重要参考人として連れてきた30代半ばの水商売風の女に、犯行に使われたと思しき傘の所在を訊いているところだ。
犯人と決めつけているようなその口調が、女の癇に障った。
何度も同じことを訊かれ、かなりイライラしている。

 「凶器って何よ!人を犯人扱いして!落としたか失くしたってさっきから言ってるでしょ?」
 「落としたのか失くしたのか、覚えてないんですか?ご自分のことなのに?」

ギョロ目の刑事は嫌みな笑いを浮かべた。

 「アンタ、本当にヤなヤツね!だから、女にモテないのよ」
 「何だとー!」
 「まぁまぁまぁ、落ち着いて。」

若い刑事が止めに入る。

 「本当に覚えていらっしゃらないんですね?どういう状況だったか、もう一度だけ話して頂けませんか?」

若い刑事が、ギョロ目の刑事とは対照的な穏やかな口調で言った。

 「またぁ?」
 「すみません、そういう仕事なモンで・・・」
 「しようがないわねぇ。アタシはあくまでも参考人なんだから、話し終わったら家に帰らせてもらうわよ。」
 「ええ、結構です。」

ギョロ目の刑事は手のひらでバンッと机を叩くと、若い刑事と交代し、腕組みをしながら部屋の隅の椅子に腰掛けた。

 「さっきも話したとおりだけど、昨日の朝は雨が降ってたから傘を持ってって、仕事中は詰め所に干しといたのよ。」
 「ええ。」
 「夜はもう止んでたから、仕事が終わって詰め所に戻った時、干しといた傘をたたんだ。」

女は自分でも確認するように、身振り手振りを混ぜながら説明した。

 「鞄をこう右肩にかけて、手提げと傘を持って2階の部屋を出たのは覚えてるわ。そのあとトイレに寄ったんだけど、そこでもちゃんと持ってた。トイレの洗面台が低すぎて傘がかからないから、アタシ、鞄を洗面台に置いて、そこかけといたのよ。だから、忘れるハズないわ。」
 「それで、そのあと1階に下りたんですね?」
 「ええ。1階にいるお客さんに「お先に!」って声をかけたときも、右手で手提げを、左手で傘を持ってたわ。建物を出て、駅に行く途中に肩にかけた鞄からケータイを出そうとして、右腕に手提げと傘をかけたの。こうやって肘を曲げた感じでね。」
 「ご自分では傘をかけたつもりでも、ちゃんとかかってなくて落としたかもしれませんね。」
 「ええ。でも、落としたら音がするから気付かないってことはないと思うんだけど・・・。」

女は腑に落ちない といった顔をした。

 「そのあと、ケータイを鞄にしまって、また右手に手提げ、左手に傘を・・・」
 「そうですか。駅に行く途中でコンビニに寄られたんですよね?駅前にもコンビニがあるのに、なぜあまり人通りのない道のコンビニに行かれたんです?」
 「そのコンビニ、ウチの近所にないから、ちょっと寄ってみたくて。」
 「本当にそれだけですか?」

隅の椅子に座っていたギョロ目の刑事が口をはさんだ。
女は刑事をキッと睨んだ。

 「す、すみません・・・!続けて下さい。」

若い刑事が女に詫びると、女は呆れたような顔をして話を続けた。

 「コンビニで雑誌とお菓子を買って、レジで鞄からお財布を出すとき、またさっきと同じように手提げと傘を右肘にかけたわ。そんなこといちいち意識してやってないから、ホントにかけたかどうかハッキリとは覚えてないケド、多分かけたと思う。」
 「傘を失くされたことに気付いたのはいつですか?」
 「コンビニを出てから、鞄にお財布をしまって、右肘にかけた傘を左手で取ろうとしたときに、あれ?ない! って。」
 「会社からコンビニの間でなくなった、と。」
 「ええ。もしかしたら、持ってきたつもりで実は仕事場に置き忘れたんじゃないかと思って、戻って詰め所とトイレに行ってみたけど、なかったわ。道路も同じところを通ったけど、見つからなかったし。」
 「コンビニで訊かなかったんですか?」
 「レジのおにいさんが代わってたから、訊きづらくて・・・。」
 「そうですか。わかりました。お帰り頂いて結構です。」

女は疲れた顔で椅子から立ち上がると、一言

 「最初からあなたと話してれば良かったわ。」

と言って、ギョロ目の刑事を一瞥すると、そそくさと部屋から出て行った。
ギョロ目の刑事は立ち上がると、キャスター付きの椅子を壁に押しやって怒鳴った。

 「何だ、あの態度は!」
 「先輩がしつこく訊くからですよ。」
 「お前、あの女、どう思う?」
 「自分はシロだと思いますよ。単に現場近くで凶器とよく似た傘を失くしただけでしょう。」
 「ふん、どうだかな。」

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だから、殺(や)ってませんって!(笑)

『アリスとお茶を』名物(?)、日常の些細な出来事をミステリー小説風にしてみる の巻。
時にはしょうf・・・小説のように。(笑)
(ちなみに、「時には娼婦のように」は黒沢年男さんの歌です。)

現場近くで事件なんて起きてませんし、ましてや取調室で尋問なんてまったくされてませんが(当たり前ぢゃ!)、女性のセリフにあるよーな状況で傘を失くしたのはホントです・・・ (´・ω・`) ショボーン
マジで、どこで失くしたんだろう?
お気に入りだったのになぁ・・・

母さん、僕のあの帽子・・・いや、あの傘、どうしたんでせうね?
(ちなみに、「母さん、僕のあの帽子・・・」は、森村誠一の『人間の証明』に出てくるアレです。)

ってか、傘失くしたことに気付かないなんて、意識がどっかイッちゃってるよね? (^^;
ゆーたいりだつ!(双子のお笑いコンビ「ザ・たっち」ネタw)

なんて言ってるばやいぢゃねーか。
ヤヴァイな・・・
ぼーっとして、仕事でミシュラン・・・いや、ミスらんよーにせねばsweat02
 ↑
嗚呼、疲れてるとギャグもつまらんね・・・

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

出た!おなじみ、アリス劇場!
待ってました!

やっぱり、アリスさんのミステリー面白いわぁflair

で、やっぱり傘は出てこないのねsweat02

投稿: 桜桃 | 2008/10/10 08:14

いや~、面白かった~。楽しませていただきました。

>(ちなみに、「時には娼婦のように」は黒沢年男さんの歌です。)

アリスさんてば、歳さばよんでるでしょー。
古いことを知っているから可笑しくって^^;

傘はコンビニでお財布を出すときにレジの台にかけたとかじゃない?
そして次の客はそれを自分のものにしたのだ!とぶんぶん刑事は推理するがflair

投稿: ぶんぶん | 2008/10/10 19:48

桜桃さん、ぶんぶんさん こんばんは!

# 桜桃さん
お待たせしました!
って、待ってて下さったんですね~
ありがとうございます (^-^)

傘は結局見つかりませんでした・・・
が、今日同じ傘を母ちゃんが買ってきてくれました!(嬉)
ちなみに、某ドラッグストアで500円弱デス (^^;
骨の数が多くて番傘みたいなんですよ(笑)


# ぶんぶんさん
楽しく読んで下さってありがとうございました (^-^)

> アリスさんてば、歳さばよんでるでしょー。
よく言われます (^^;
妖怪なんで、人間の齢に当てはめちゃダメなんでしょうね。

> 傘はコンビニでお財布を出すときにレジの台にかけたとかじゃない?
おぉっ、さすがぶんぶん刑事!
その可能性大!です(爆)
腕にかけたつもりが、無意識のうちにレジ台にかけて、そのまま置き去りにしたのかも。
レジのにーちゃんも一言言ってくれればイイのにぃ~っ (←必殺!責任転嫁 (^^;

自分で言うのもナンですが、さすが歳をサバ読んでるだけあって、そろそろ痴呆が始まってきたよーです (^^;

投稿: アリス | 2008/10/11 01:06

こんにちは♪

ムフフ、面白いな~(*^▽^*)
コンビニっていえば、病院帰りにコンビニに寄って帰宅後、買ったはずの飲み物が無いことに気付きました。
レシートにはちゃんと記載されています(汗)
おかしい!とコンビニに電話すると・・・
レジに置き忘れ(正確には店員の入れ忘れ)でした(苦笑)
結局、店員さんがウチまで届けてくれましたよ。

アリスさんも聞いてみればよかったのに~。

投稿: style-TK | 2008/10/12 17:17

style-TKさん、こんにちは。

お客の私がぼーっとしているときがあるよーに、コンビニの店員さんもそんなときがあるのでせう。(笑)

> アリスさんも聞いてみればよかったのに~。
むか~し「A型は消極的で客という意識がない!」ってゆーハイチュウのCMがありましたケド、まさにそんな感じです (^^;
客なんだから、ヘンに遠慮せずにちゃんと訊けばヨカッタんですケドねぇ・・・

投稿: アリス | 2008/10/13 14:19

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