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2004/09/19

親父[4]

この記事をお読みになる前に、親父[1]からお読み下さい。
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9月18日(日)。
母ちゃんから「そろそろ危ないから」と言われ、私は兄貴と病院に行った。
病院には伯母ちゃんたち(母の姉たち3人)も来ていた。
7人兄弟(女・女・女・男・男・男・女)の末っ子の母が、自分たちよりも先に旦那さんを失くすことを不憫に思い、わざわざ群馬から出てきてくれたのだった。

親父は酸素マスクをつけるまでになっていた。
何度か呼吸が荒くなりいよいよかと思われたが、今まで何度もそんなことがありそのたびに持ち直していたので、今回も大丈夫だろうと話していた。
案の定持ち直し、呼吸も落ち着いてきたので、翌日仕事のある私と兄貴は帰宅することに(猫もいることだし)。
電車の中で私も兄貴も一言も喋らなかった。
疲れているハズなのに、2人とも寝ずに、ただ一点を見つめて黙っていた。

家の最寄駅に着くと、駅のアナウンスで名前を呼ばれた。
(注:当時はまだ携帯電話なんてものはない。)
駅務室に行ってみると、駅員さんが慌てた口調で言った。
「今お母さんから電話があってね。お父さんの容態が急変したから病院に戻るようにって。」
「あ・・・、そうですか・・・」
突然の事態に、頭がなかなか切り替わらない。
奥から別の駅員さん2人も顔を出した。
「コレ、時間調べておいたから。今から乗ると品川行きだからね。品川の降りたホームで待ってるとすぐに泉岳寺(せんがくじ)行きが来るから。泉岳寺で今度は高砂行きに乗り換えて。それで蔵前まで行けるから。」
と、時間をメモした紙切れを渡してくれた。
「あ、急いで!電車が来ちゃう!コレ、終電だから!」
私たちは駅員さんたちにお礼を言うと、ホームに走って行った。
(親切な駅員さんたち、その節はお世話になりました。探し出して直接お礼を言いたいくらいです。)

無事に終電に乗る。
時間は確か23時頃。
ほとんど客はいなく、がらんとしていた。
各駅停車なので、余計に長く感じる。
1駅1駅停まるのが煩わしい。

25時(夜中の1時)頃、やっとの思いで病院に着くと、伯母ちゃんたちが駆け寄ってきた。
「さっき持ち直したよ」
ほ・・・っ
「何度か危なかったんだけどさー」
「あんたたちが来るまで待っててくれたんだねー、お父さん」
伯母ちゃんたちが元気付けようといろいろ言ってくれても、気が張っていて頭に入ってこない。
母ちゃんはちょこっと出てきて何か言っていたが、すぐに病室に戻って行った。

「あんたたち、今のうちにちょっと寝ておきな」
「大丈夫。何かあったら起こしてあげるから」
私と兄貴は伯母ちゃんたちの好意に甘えて、病室の近くの長椅子で仮眠をとることにした。

朝方、何やら廊下がバタバタと騒がしい。
精神的にも肉体的にも疲れていて熟睡していた私は起きようにも起きられずにいた。
そのとき、伯母ちゃんの1人が急いで私たちを起こしに来た。
「あんたたち!お父さんが・・・!」
その声に、私も兄貴もガバッと飛び起きると病室に駆け込んだ。

病室は緊迫していた。
呼吸の荒い親父。必死で呼びかける母ちゃんと伯母ちゃんたち。何も言えずに立ち尽くす私と兄貴。
目の前でバタバタと処置している姿が見えるが、まったく頭に入ってこない。
そして、事務的な医者の声。
「1994年9月19日、6時27分、ご臨終です。」
ドラマで聞きなれた言葉、見慣れた場面。
頭の中が真っ白で何も考えられなかった。
(ちなみに、親父の最後を看取ったのは、あの熱心な先生ではなく当直の若い医者、そしてよりによってあのクサレ看護婦だった・・・)

結局一度も復職することのなかった親父。帽子だけが残った。
葬儀に来てくれた親父の職場の女のコが泣いていた。
家族にはあんなだったケド、他の人には優しかったから、職場でも皆に慕われていたのかもしれない。

めちゃめちゃ酒飲みで、ヘビースモーカーで、クソマジメで組合の仕事なんかやってたからストレスも相当溜まっていたであろう親父。(一番肺ガンになりやすいタイプやん・・・)

コレは、ロバのぬいぐるみ『ドンキー』。
(その大きさを分かって頂くために、下に携帯電話を置いてみました。)
ドンキーの画像

子供の頃、親父が買ってきてくれたものだ。
満員電車でまわりの人に邪魔にされながら、かわいい娘のために買ってきたのだろう。
でも、当時の私はそんな親心が分かるワケもなく、自分の好みではないとほとんど遊ばなかった。
親父は「何だ、せっかく買ってきたのに」と怒っていた。
社会人になって、満員電車で通勤するようになって、やっと親父の苦労が分かった。
でも、もう親父はいない。
一緒に酒飲んだりしたかったなぁ・・・。
「親孝行したいときに 親はなし。」
皆さんも、親御さんがご健在のうちにいっぱい親孝行して下さいね。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

アリスさん,日記を読ませていただいて,涙が止まりません。

お父様も,あちらでちゃんとアリスさんのお気持ち,分かってくださってると思います。

投稿: える | 2004/09/20 01:13

えるさん、コメントありがとうございます(^-^)
そう言って頂けると救われます。

投稿: アリス | 2004/09/20 01:44

こんにちは。
私も4年前に突然の死で父親を亡くしています。
私も決して父親に優しい息子ではありませんでした。
私は自分の病から、どうせ私のほうが早く死ぬだろうと思っていたので父の死はショックでした。

でも、私は信じています。
今でも父は側にいて、私たち家族を見守ってくれてると♪
アリスさんのお父さんも側で見守ってくれてますよ、きっと☆
(^o^)/

投稿: style-TK | 2004/09/20 14:56

style-TKさん、こんにちは!
そうですか~、style-TKさんもお父様を・・・

> アリスさんのお父さんも側で見守ってくれてますよ、きっと☆
> (^o^)/

それは痛感しました(^^;
毎月、月命日(か、それよりも前)にお墓参りに行っているのですが、1度つい忘れてしまいまして・・・。
そしたら、ものすごい頭痛に襲われて、鎮痛剤を飲んでも効かなくて。
「あぁ、親父だな・・・」とピンときて、お墓参りに行ったらあっさり治りました。
親父~っ、お手柔らかに・・・(笑)

投稿: アリス | 2004/09/20 17:17

アリスさん、こんばんは。
うまく言葉に出来ませんが、涙が止まらなくなりました。
私は今、両親とも健在で今日は敬老の日で姪から手紙をもらってとても喜んでいました。まだ元気で『親が死ぬ』ということを考えたことはなかったのですが、アリスさんの記事を読ませていただき、敬老の日に孫から手紙をもらうようになった両親を、これからはもっと親孝行しなければいけないんだなと改めて思いました。

すばらしい文章を読ませていただきありがとうございました。
アリスさんのお父様、アリスさんのお父様を思う気持ちに喜んでらっしゃると思います。

投稿: じまぁ | 2004/09/20 20:23

じまぁさん、こんばんは!
あたたかいコメントありがとうございました。
お酒飲まなきゃイイ親父なんですケドねぇ・・・(^^;

この記事を読んで下さった方々には、私のように後悔して欲しくないですね。
それに、人の命を適当に扱うような病院があるということを多くの方に知って頂きたいです。
(病院名出したいくらいです)

投稿: アリス | 2004/09/20 22:08

アリスさん、まいどー(*^ー゚)

お父様についてのブログ、じっくり読ませていただきました。

さくたんの母親は、いわゆる「障害者」でして。
身体のほうではなく、精神的なものの方です。
さくたんが小学校高学年くらいの頃から、症状が出始め、
現在では、服薬が欠かせなくなっています。

さくたんが大学4年生の頃、症状が悪化し、東京に就職する
予定(某・青と白のボーダー制服のコンビニチェーンの本部)
でしたが、内定を辞退し、故郷に帰ることになりました。
そこに就職するつもりで就職活動してましたので、それから
就活しても故郷(かなり田舎)ではなかなか求人も決まらず、
卒業して約1年、フリーターというやつをやってました。
当時、母親が長期入院しており、家のことやバイト、就活で
心が荒んでいたのかもしれませんが、
「どうして私の母親はこんななんだろう・・・」
と思っていました。

でも、運良く就職も決まり(現在の会社)、責任ある仕事を
させてもらい、すばらしい人々にも出会うことができました。
フリーターだった1年の間に、パソコンを購入し、インター
ネット&パソコン操作を覚えることもできたし。
家族念願の家(さくたん名義)も買うことができました。
なにより、家族が近くにいることで、母親の容態も落ち着き、
再入院はしないで良い状態にあるのが嬉しいです。

小さい頃、よく近くの野山に遊びに連れてってくれた母親。
時折、一生懸命お菓子を作ってくれたこともありました。
本当に純粋な人で、それゆえ精神を病んでしまったのかも
しれません。

結果、さくたんは故郷に戻ってきて良かったのだと思います。
時々、イライラしているときなど、冷たくしてしまうときも
ありますが、出来る限り、楽しく、一緒にいようと思います。

アリスさんのブログを読んで、あらためてそう感じました。
本当にありがとう。

投稿: さくたん | 2004/09/21 00:56

さくたんさん、そんな大事なお話を私ごときにして下さってありがとうございました。
私もさくたんさんや他の方からのコメントを読んで、改めて親の大切さ、ありがたさを実感しました。
ありがとう!

投稿: アリス | 2004/09/21 22:22

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